弁護士、伊藤綾乃さんの子育て徒然コラム「モモ」と時間泥棒

 自宅にいる間、息子とは、iPadでの動画禁止の約束をした。

 その代わりに、久々にアプリ「オーディブル」を開いて、聴き出したのは、ミヒャエル・エンデの著書「モモ」。

(オーディブル:Amazonオーディオブック。プロのナレーターが朗読した本をアプリで聴けるサービス)


 私が子ども時代、今は亡き祖父から送ってもらった本「モモ」は、読まずにベッド脇の本棚に入れっぱなしのまま、大人になってしまったけれど、ふと、気になった次第。


 最初は、全然、時間泥棒と戦ってないじゃん、と言っていた息子だけれど、モモが時間泥棒の大群に追いかけられるシーンまで来ると、じっと黙りこくった。私も、身じろぎせずに聴き入った。


 人間から時間が奪えないとなると、時間貯蓄銀行にわずかに残った時間の華を「節約」するために、時間泥棒はコイントスで、仲間の半分を粛清してしまう。時間効率化のためには、これが道理だと、、、、。



 時計で計る時間と、心で感じる時間。

 食にかけるお金と、健康。

 将来のためになるお勉強をする子どもと、

 今を感じて遊ぶ子ども。


 スマホを通じて情報銀行に貯蓄されていく個人の情報と思考と、一人の自由。

 子どもが生き生きと遊ぶ横で、虚にスマホをいじる大人(私自身でもある)、


 「これを、将来起きる話として語っても良かったのです。」

 という、エンデが汽車で出会ったとする、知らない旅人の言葉。

 エンデは、この旅人から時間泥棒の物語を聞いたという。


 ここで文明論を語るのは陳腐なのでやめておくけれど、大人の私にも、あまりにも胸に迫るものが多かった。


 子どもの頃、これを読んでいたら、私は祖父とどんな話をして、どんな大人になっていただろう、と今更ながら思う。


 さて、話を聴きながら床に転がり寝入ってしまった息子は、朝、寒い寒いと言って起きてきた。


 私が冷房をかけ過ぎたからか、はたまた、時間泥棒の、時間を冷凍するための冷気にやられて、モモに出てきた亀のカシオペイアと一緒に風邪をひいてしまったのか、、、、。


「モモ」(ミヒャエル・エンデ作)について

 時間どろぼうと,ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子モモのふしぎな物語。時間の真の意味を問う。エンデの名作。(岩波書店。内容説明より)


伊藤法律事務所 (Ito Law Office)


弁護士 伊藤 綾乃