整頓学の馬渕さん「オフィスの究極の整理整頓法はさり気なく少しずつ!」
更新日:2021年9月13日
オフィス環境をよくするために、とった行動とは
職種にもよると思いますが、事務机で部署ごとのブロック(私の業界ではそれを「島」と言います)に分かれていることが多いと思います。その際、ブロック間の通路(端の机と机の間)の幅を60㎝が標準的と仮定します。

ある時、こんなことがありました。(実際の体験です!)
「島」の端に座っていたときのことです。私の横の通路を通過する人が、私の肘や机をこすっていくことが多かったのです。
しばらくはそんなものかと思っていましたが、周りを見渡したらどうも違うのです。私の横の通路だけが幅50㎝程度だったのです。それでは困る、何とかしようと考えました。
そこで私がとった方法とは? 以下の3つの中のどれでしょうか?
①会議にはかり、みんなの了解を得たうえで島全体をみんなで少し移動させた。
②移動するよと宣言して、一部の協力者と動かした。
③自分一人で黙って動かした。
答えは③です。なぜ①や②の方法を私が取らなかったか?
③が、一番ストレスのかからない方法だったからです。
手間と時間はかかりましたが、一人ほくそ笑みながら楽しんで作業することができました。
具体的に説明すると、10人分の島全体を約2週間かけて移動させたのです。なぜ2週間もかけたのかって?
当然です!1回で大きく動かしたら、みんなにすぐバレてしまいますから。1回に動かすのは3㎝程度にしました。それも2~3日に1回に抑えて。休前日は少し多めに。
もちろん誰もいない時にしかできないので、平日実行するときは朝早く出勤するか、最後の一人になるまで残るかでした。理由を作って休日も出て完了しました。
最終的に自分の横の通路幅を60㎝にしたのかって? いいえ違います。
今までの迷惑料も含めて70㎝位にさせてもらいました。余裕の気分になって一人でニヤニヤしてしまいそうでした。
しかし、これで終わりにしてしまうのはもったいない気がして、ひと月くらいしてから、ごく親しい一人だけに打ち明けたのです。当然、彼も気がついていなかったし、大きな声を上げそうになったので私が焦ったくらいです。
これで私もしてやったりの大笑い。じゃんじゃん!

人は僅かな変化には気づかない
この事例は整理整頓の中のシステム変更と言えるでしょう。
仕事現場の整理整頓で一番困るのは「私は別に困っていないし現状のままでいいじゃん!」という保守的な抵抗勢力だと、私は常々考えています。その集団を説得するための時間と労力をなるべく減らしたいとも、昔から考えてきました。
人は僅かずつの変化には気がつきません。これを認知能力と言うようです。
拙著「整頓のマジック」で職場の本棚やシュレッダーの使い方改善までの苦労を載せましたが、それらはある意味簡単でした。仕事時間内にやれるし、必ず協力者が現れてくれるからです。また、時間の経過とともに、集団としての使用ルール(習慣)も自然と広がるからです。
よほどのへそ曲がりでない限り、きれいな環境や分かりやすいシステムを嫌う人はいません。それに、維持管理するために自分は努力しなくて済むともなれば尚更です。私の経験では、環境の維持管理をする人(本人にその意識があるなしに関わらず)が集団の2割いたら大丈夫と思っています。(続く)
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