【住宅地で自然栽培】「たんぼのわ」主宰の馬場寛明さんインタビュー(前編)「自然栽培のお米づくりは子育てにつながる」

更新日:2021年8月29日


ひょうたん田んぼ 日野市

東京の日野市で、自然栽培によるお米づくりをしている馬場寛明さん。

お米をつくるだけでなく、田んぼを介して人をつなげている。

田植えイベント、子ども、親子向け自然体験イベント等々。

筆者も田植えイベントなどに参加、田んぼの魅力を感じてきた。

都下の住宅地に点在する田んぼで、新しい形のお米づくりをはじめている馬場さんに、お話をうかがった。


ざっくりいうと

・自然栽培とは? 有機栽培とは違う

・自然栽培は、子育てにつながる

・子どもの田んぼ体験プログラムを実施

・多くの大人たちも引き寄せる田んぼの魅力


馬場寛明さん

馬場寛明さん

【プロフィール】

東京都出身。自然と調和した生き方を提案している㈱ナチュラル・ハーモニーのスタッフとして、2018年まで店舗運営やイベント企画・天然菌によるオリジナル商品作り等に携わる。 以前より東京都日野市で行ってきた自然栽培稲作を介して、新たな事業を2019年にスタート。自然がつながり、楽しみ、学べる場づくり、コミュニティづくりを行っている。 また、横浜市都筑民家園を拠点とした「遺跡フェスタ・江戸市」や、伝統構法での小屋作りワークショップ「小屋の学び舎」のプロデュースをしている。

TANBO NO WA 公式HP

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★公式HPで自然栽培米、自然栽培米で作ったおかきなどを販売している。

こちらから

日野市の田んぼ
馬場さんの田んぼ。8月、稲が順調に育っていた。

肥料を与えないで育てる自然栽培


最近、自然食を好む人は多く、スーパーには有機野菜が普通に並んでいる。

一方、「自然栽培」の野菜はあまり見かけない。


自然栽培と、有機栽培はどう違うのか? 馬場さんに質問してみた。

すると、それまで少し固さのあった馬場さんが、堰を切ったように話し出した。


「太陽、地球(大地)、水があれば野菜は育ちます。自然栽培は、自然の中にあるものを使って成長するように、環境づくりをすることなんです。


 人為的には肥料を一切あげないんです。種に可能性が詰まっています。あとは周りの環境を整えてあげて、その種がのびのびと成長しやすい場所づくりをしてあげます。肥料がなくても、自らの力でどんどん育っていく、というのが自然栽培のお米です」


違いをまとめると、次のようなことだ。


有機栽培:化学肥料や農薬にたよらず、家畜小屋の糞尿・敷きわらや堆肥など、動植物質の肥料で作る。(一部の農薬は使用を認められている)


自然栽培:種が本来持っている力を引き出して育てる。


つまり、自然栽培は、肥料をあげずに環境を整えて、種の力を引き出して成長させる農法ということだ。


さらに、馬場さんは子育てに例えて、説明していった。


「以前、お店にいたときによく説明していたんですが、有機野菜は、家に帰ると冷蔵庫にたくさんのごちそうが入っている家の子。自然栽培の野菜は、自分で道具を揃えて狩りに行って、自分で料理までして、たくましく成長する子、という感じなんです」


「自然栽培は、子育て、人育てにも通じます。例えば、苗が少し元気なかったら、肥料をあげればすぐに元気になります。でも、本当は周りに何か元気になれない理由があるはずなんです。何がよくないのか、周り(原因)をよく見てあげる。肥料によって育てるのではなく、元々持っている力を引き出してあげることです」


「子どもたちは、みんな大きな可能性を持っているから、その力を引き出してあげる。一人ひとりがいる環境や場を整えてあげれば肥料はいらないんです。自分で根を張り、必要な養分を取っていきます。人のあり方とお米のあり方は似ています」


弱っていたら薬、肥料と、何かを与えるのではなく、馬場さんは環境を整えて、種の力を引き出すようにお米を育てている。


日野市の田んぼ
5月、有志が田んぼを体験した。

子どもたち、大人も田んぼ体験


馬場さんは、お米づくりなどをしながら、子どもたちの田んぼ体験も受け入れている。

近隣の子どもたちだけでなく、友人が勤める渋谷のスイミングクラブの子どもたちも毎年稲作を楽しんでいるそうだ。


「スイミングクラブの子どもたちの体験プログラムは5年目になります。最初、都会の子どもたちにはどうかな?と思ったのですが、まったく問題なかったです。最初は泥に戸惑っていても、すぐに慣れて喜んでくれます。

また、生き物が好きな子は多いので、生き物調査というプログラムもやっています」


 さらに、秋には収穫したお米を炊いて食べるというイベントも行っている。

「マッチで薪に火をつけて、収穫したお米を炊くという体験をして、ご飯を食べたり、しめ縄を作ったりしています」


稲作体験は、子どもや親子だけでなく、近隣の人々、田んぼに親しみたい大人たちも引き寄せている。今年の6月には、毎年恒例の田植えイベント行い、子どもから大人まで多くの人々が田植えを体験した。筆者も見学した。


田植え体験 日野市
6月、多くの人が田植えを楽しんだ

とはいえ、苗を植えた、炊いたご飯を食べたなど、“○○をした”という体験が大事なわけではない。馬場さんはいろんなことを肌で感じてほしいと言う。


「いくつの苗を植えたとかそういうことだけじゃなくて、風とか陽射しとかその空間でいろいろ感じてほしいんです。来ていただいて、感じてもらうのが一番いいと思います。言葉でいうのは難しいですね」

そう言うと、笑っていた。

ひょうたん田んぼ 日野市
5月のひょうたん田んぼ。(田植え前)
ひょうたん田んぼ 日野市
8月のひょうたん田んぼ。稲が育っている。

田んぼには、自然の循環がある。太陽、水、大地、そこからエネルギーを受けて育つ自然栽培のお米、そのお米を収穫して、食べて、また種を蒔く。

その循環の中に入ること。

空気、匂い、風、感触、自然の中に入る感覚を肌で感じること。田んぼの中に入り、自然の営み、その力を体で感じてほしいという思いなのだろう。


田植えイベントを見学したとき、「いろんな人が田んぼに入って作業すると、田んぼも喜びます」と、馬場さんは話していた。


“田んぼが喜んでいる”ことを、感じてみたいものだ。

知識を得た、田植えをしたということではない。その時、その場でしか味わえない自然の魅力が、自然栽培の田んぼにはある。


後編は「用水路を介して人々をつなぎたい」です。


★【住宅地の田んぼで自然栽培】「たんぼのわ」の馬場寛明さんインタビュー(後編)「用水路をきれいにしてまちづくりを」

こちらから


(取材・まとめ いとう啓子)