【住宅地の田んぼで自然栽培】「たんぼのわ」の馬場寛明さんインタビュー(後編)「用水路をきれいにしてまちづくりを」

更新日:2021年9月2日

東京の日野市で、自然栽培によるお米づくりをしている馬場寛明さん。

お米をつくるだけでなく、田んぼを介して人をつなげている。

田植えイベント、子ども、親子向け自然体験イベント等々。

筆者も田植えイベントなどに参加、田んぼの魅力を感じてきた。

都下の住宅地に点在する田んぼで、新しい形のお米づくりをはじめている馬場さんに、お話をうかがった。


ざっくりいうと‥‥

・住宅地の中で、新しいスタイルの田んぼを目指して

・用水路を整備して、水と“氣”も流れるように

馬場寛明さん

<前編>「自然栽培のお米づくりは子育てにつながる」こちらから


馬場寛明さん

【プロフィール】

東京都出身。自然と調和した生き方を提案している㈱ナチュラル・ハーモニーのスタッフとして、2018年まで店舗運営やイベント企画・天然菌によるオリジナル商品作り等に携わる。 以前より東京都日野市で行ってきた自然栽培稲作を介して、新たな事業を2019年にスタート。自然がつながり、楽しみ、学べる場づくり、コミュニティづくりを行っている。また、横浜市都筑民家園を拠点とした「遺跡フェスタ・江戸市」や、伝統構法での小屋作りワークショップ「小屋の学び舎」のプロデュースをしている。

TANBO NO WA 公式HP

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★公式HPで自然栽培米、自然栽培米で作ったおかきなどを販売している。

こちらから

 
日野市で農作業 

●住宅地と農業の共存で新しいまちづくりを


 日野市では、多くの田んぼが売却され宅地化されている。一方では、相続問題や、後継者がいないなどの理由で放置され休耕田になっているところも多い。

 そんな休耕田を借りて、馬場さんは自然栽培でお米づくりをしている。


 馬場さんの田んぼの横には、最近建てられた新しい住宅がある。東京の多摩地区では、珍しくない光景だ。


 そのため、田んぼを営むためには、近隣の人々との関係性も重要になってくる。


「住宅地の中の田んぼは、めんどーなことも多いんです。人との関わり、関係性の中で成り立っています。そのめんどーなことを意味あることに変えたいと思っているんです」


 つまり、住宅地と農業の共存だ。

「都心と山間部の間のぎりぎりの所にあるので、自然体験と都会の生活ができるという、ある意味、理想的なライフスタイルを創り出すことができると思っています」


 今、馬場さんは、近隣の人々にも田んぼに親しんでもらおうと、田植えイベントなども行っている。


「昔はみんなで用水路の草を刈ったり、掃除したり、コミュニティの中で田んぼが成り立っていた。それを今のかたちでやるようにしていっても面白いかなと思っています」と馬場さんは言う。

住宅地の中のたんぼ 日野市
住宅地の中に田んぼがある

●用水路をきれいにすれば、いい“氣”も流れる


 ある朝、馬場さんはベトナム人の若い男の子に出会ったという。彼は、用水路沿いに生えていたミントを採っていた。ベトナムでは、近所で採ってきたミントなどを料理にのせて食べるそうだ。


 その様子を見た馬場さんは、地域ごとに用水路沿いに食べられる野草を育てたらどうかと思いついたそうだ。

 

「今は、用水路にたばこのフィルターが落ちていたり、生活排水も100%入っていないとはいえないんです。みんなで、用水路をきれいにして、食べられるセリ、クレソン、ミントなどを植えたらいいと思いつきました。用水路を美しくしていくための一つのアイデアとしてそういう提案をしていきたいと思っています」

 

 江戸時代には、多摩の米蔵ともいわれた日野市。多摩川・浅川からひかれた農業用水路が今も市内を網の目のように流れていて、その流れは川から海へと続いている。

 

「草刈りや掃除をすることで、近隣の方々とコミュニケーションをとるきっかけにもなって、気持ちのいい関係が育っています。水が流れていくだけでなく、いい“氣”も流れる場になっていきます。

 用水路を埋めてしまうのか、水も“氣”も通るような流れのある町にするのか、住んでいる一人ひとりの考え、行動によります。

 荒れていた用水路がきれいになって、喜ぶ人が一人でも二人でも増えてくれたらいいと思います。用水路の水を飲めるようにするのが、ひとつの目標ですね」

ひょうたん田んぼの水路
たくさんの水路が流れている

 馬場さんは今、地元の環境団体とも連携して、近隣住民と用水路の整備を進めている。


「きれいにすれば、用水路に捨てられるたばこも減っていくと思います。コロナの問題で、世界中の人がマスクするようになりましたよね。やればできると思いました。みんながこの水をきれいにしようと本氣で思えば、川の水を飲める水質にもできると思うんです」

 馬場さんは、力強く話してくれた。


 用水路の水の流れのように、人のいい“氣”が流れて。用水路沿いには、食べられる野草が育ち、花が咲き、水も飲めるようになったら‥‥。

田んぼのある住宅地ならではのまちづくりへ、馬場さんの夢は広がっている。


(写真・まとめ みらひらナビ いとう啓子