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書籍「小春のあしあと」著者、長江さん:人を貸すヒューマンライブラリーの「本役」を体験しました


ヒューマンライブラリー

ヒューマンライブラリーとは?


ヒューマンライブラリーってご存じですか。

東京ヒューマンライブラリー協会という組織があります。そのホームページでは次のように説明されています。


「ヒューマンライブラリー(以下、HL)は、生きた人間が本役となり、一般の読者に貸し出す対話型イベント活動です。2000年にデンマークの若者が始めたこの『人間図書館』は、心のバリアを溶かし、多種様々な人を結びつけ、共感的理解を促進しダイバーシティを育成する活動として、瞬く間に世界中に広がり、現在では世界90カ国で開催されています。」


同協会によりますと、この活動が東京大学によって日本に導入されたのは2008年のことだそうです。それ以来、各地の大学や地域で100回以上の開催があったとされています。そして、今やHLは、ダイバーシティ(多様性)の育成だけでなく、多文化共生や異文化理解、地域づくりを促す有効なツールとしても注目されています。


差別や偏見の軽減を最大の目的とするHLの「本役」になるのは、主に何らかの生きにくさを抱えている人です。


そして、多くても5人以内の「読者」を相手に、安心・安全な環境の中で自己開示(自分の個人的な経験を語る)をして、読者と対話をする形をとります。


語りが20分で対話が10分、合わせて30分がめやすになっています。筆談を用いる場合でも45分を超えない程度がよいとされています。


「脱カテゴリー化」が共感を呼ぶ


少人数の読者と短い時間にこだわっているのは理由があるそうです。


少人数相手だと、「本役」は友人、知人に語るような感覚になれます。一方、「読者」は、最初は目の前の人を障がい者、アルコール依存者、といったカテゴリーで「本」を「借りた」が、近い距離で話を聞いているうちに、そのカテゴリーが背後に追いやられて、目の前の人を自分と同じ「人」と認識し始めるのだそうです。


この「脱カテゴリー化」が共感を呼び起こし、差別や偏見の軽減につながるというわけです。そして、短い時間だと本役と読者の心理的、身体的負担にならず、考える余韻を残す、ちょうどいい長さだと言われています。


本物の本で読んだ話などは、他人事のように遠くに感じられても、目の前の人の生々しい経験話は自分事として響き、心に残り、さらに他の誰かに伝えたくなると言われています。

HLで話を聞く人数は少なくても、その波及効果は大いに期待できるのでしょう。


また、「本役」の人も、安心・安全な環境の中で、本音を語る。それを目の前の人が興味を持って真剣に聞き、対話もできる。このことから、社会とのつながりや共感を実感し、心のリハビリになるそうです。

ヒューマンライブラリー

オンラインで「本役」を体験


今年4月、私の多文化経験をまとめた『小春のあしあと』を出版しました。それを読んだ友人がたまたまHLの活動に関わっていて、「本役」になってみませんかと声をかけてくれました。

以前からHLについて興味を持っていた私は、人前で自分をさらけ出す不安を抱えながらもチャレンジしてみようとお受けしたのです。本番に先立ち、HLの入門書も購入してにわか勉強をしました。


6月末、オンラインになりましたが、HLの「本役」を体験することができました。

当日は、もう一人の「本役」の遅刻により、結局、私が20人を相手に語ることになってしまい、本来の「少人数での対話」は経験できませんでした。


しかし、「読者」のみなさんからたくさんの質問が出たので、高い関心を持って聞いてくれたことが伝わりました。語ってよかったと思いました。


ちなみに、日本の場合、「読者」になる絶対条件は「本」を傷つけないという誓約書にサインすることだそうです。それが安心・安全な環境の保証になっています。


いつか、コロナ禍が落ち着き、対面での開催が許されたら、少人数で閉じられた「場」での、本物の対話も経験してみたいと思いました。


長江春子(小春)さんについてはこちらへ


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