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【REPORT】高次脳機能障害者のケアセンターふらっと施設長の講座「水平に!当事者と共に学び楽しむ!」@東京世田谷

更新日:2021年12月2日

 11月24日、東京都世田谷区・三軒茶屋にあるキャロットタワーで、NPO&市民活動応援セミナー「教えて先輩!はじまりの一歩目~手探りで取り組む 社会課題と突破口」が開催された。

 主催は、社会福祉法人世田谷ボランティア協会。

 講師は、通所介護施設・介護学習スペース、ケアセンターふらっと施設長で、高次脳機能障害相談員の和田敏子さん。


 世田谷ボランティア協会のNPO&市民活動相談窓口には、コロナ禍で以前よりも多くの相談が寄せられている。

 いかに事業を継続させ、活性化させていくのか悩む人や団体に向けて、同セミナーは企画された。

世田谷ボランティア協会福祉事業部のケアセンターふらっと
挨拶する世田谷ボランティア協会の大垣内さん

★ポイントは

・手探りで前例のない事業をはじめる

・当事者に助けられて

・サービス提供でなく、水平に

 

ケアセンターふらっととは


 世田谷ボランティア協会「ケアセンターふらっと」は、人生の半ばで、病気や事故による後遺症として障害がある方が通う施設。


 比較的重い後遺症や障害を抱えた方の在宅生活を支える暮らしリハビリテーションの場として開設された。

 その活動は、相談からはじまり、リハビリテーション、外出活動、創作活動、料理作り、室内活動、仲間づくりなど幅広い。


 今では、パンを作ってイベントで販売、食事と音楽を地域の人たちと一緒に楽しむ「エテ・マルシェ」、当事者が講師となりアートを楽しむ「サタデーアート」など、活発な活動を展開している。


高次脳機能障害とは

 脳血管障害や頭部外傷により脳が損傷を受け、言語や記憶など認知機能に障害が起こり、日常生活にさまざまな困難な生じることがあります。

 この障害は外見上分かりにくいため、一般の人に理解されにくく、ご本人やご家族、周りの人たちの負担が大きくなることがあります。

(世田谷区障害福祉部障害保険福祉課のパンフレットより)

ケアセンターふらっと施設長の和田さん
ケアセンターふらっと施設長の和田さん

手探りで前例のない事業をはじめる


 渋谷区の心身障害者福祉センターで21年務めたあと、和田さんは1996年に世田谷ボランティア協会に入職した。


 当時は、高次脳機能障害の分かるヘルパー、ケアマネジャーはほとんどいなかったという。

 高次脳機能障害者向け施設は、前例もなく初の取り組みだったが、和田さんは当事者から背中を押されてケアセンターふらっとの開設に携わった。


 「体験の積み重ね。モデルがない人生は誰もが同じ」と和田さん。

 大切にしたことについて、次のポイントをあげた。


・地域で活動を体験

・互いの体験を報告し合う

・自己評価をする

・小さなステップを支援者や当事者と共有

世田谷ボランティア協会福祉事業部のケアセンターふらっと
20名近くの参加者が集まり、話し合いも行われた

当事者に助けられて


 一番大切にしてきたことは、「当事者の力を借りて、コミュニケーションを続ける」ことだったそうだ。


 当事者が自己選択、自己決定することの大切さに気付き、対話することのできるコミュニティをひたすら続けていった


 当事者のひとりは、片手で餃子を作り、学生に教える料理教室を開催。また、学生に失語症について教える活動も行なった。

 和田さんは、当事者がやりたいことを応援してきた。


 そして、困ったときは当事者に相談したそうだ。

「困ったときには、当事者に助けられています」


 「私達に任せてください」と、認知症のおばあさんたちが、豚汁を500人分つくるのに参加してくれたこともある。

 豚汁を作ったことを、おばあさんたちは翌年も覚えていたという。

「自分から楽しくやったことは、記憶しているんですね」


 また、何ができるのかできないのか分からない中、地元の八百屋さんのお手伝いに行ったこともある。

「一緒にやってみると、できることが分かってくる。当事者と共に学び、楽しむことが大事です」


サービス提供でなく、水平に


 障害者に対して、何かをしてあげるという気持ちになりがちだが、和田さんは障害を持つ人たちがやりたいこと、できることを一緒に考えて、後押している。

 

 車椅子の方が街に出たとき、知らない人から写真撮影を頼まれた。「車椅子になってはじめてのこと」ととても喜んでいたそうだ。

 「街に出かけていけば、自然と声がかかるのです」


 サービスを提供するのではなく「当事者を真ん中から、水平に」と、和田さんは強調していた。


理解を広げよう得ようとするベクトルではだめなんです。物事を進めていく延長線で伝わっていく。自然に楽しみたい、何かしたいということを共有できることからはじめることだと思います。当事者の人たち、自分の中にあるハードルを越えたとき、理解し合えることにつながるのだと思います」 

 

「相手のことを信頼していけば、明日は見える、そして、それが希望になると思っています。」


 ケアセンターふらっとの活動をはじめて今年で25年。和田さんはそう語った。

 

 世田谷ボランティア協会のホームページの最初に、「ココカラ」という詩が掲載されている。


「障害を負うことは喪失ではなく、新たな獲得です。

人はその体内に宿した自然に従うとき、『生きるもの』に帰ります」

(一部抜粋)サイトはこちらから


  まずは障害者への考え方を改めて、自然体で接することからはじめることが、大切なのだろう。 

  どうしても、障害者に対して何かをしてあげたいという気持ちになりがちだ。

  しかし実は逆で、固定観念から解き放たれて、教えられることの方が多いのかもしれない。

(みらひらナビ いとう啓子) 

ケアセンターふらっと 世田谷ボランティア協会

 

ケアセンターふらっと 世田谷ボランティア協会

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