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キックオフセミナー「インターネット市民塾 約20年間の市民講師400人のチャレンジ」レポート2:市民講師から道が開ける

更新日:2021年10月3日

 5月30日、ICBCキックオフ・オンラインセミナー「インターネット市民塾 約20年間の市民講師400人のチャレンジ」を開催しました。


 NPO法人地域学習プラットフォーム研究会理事長で、総務省地域力創造アドバイザーの柵 富雄(さく とみお)さんに、富山から登壇していただきました。

 前回に引き続き、レポートをお送りいたします。


★第1回目のレポート「インターネット市民塾ってなに?」はこちらへ

 

こんな内容です


・こんなタイトルの講座が開催された

・多くの働き盛りの男性が講師に

・市民講座が、学びの循環を生み出す

・市民講師を体験する意味

・地域も元気にしていった



多様な講座を開催


 まずは、インターネット市民塾で行われた講座を紹介します。


講座タイトル


・佐々成政について(歴史)

・飛ばして楽しむ竹とんぼ

・富山の方言

・ジャズ講座

・親子で体験、せみの観察

・ITってこんなに面白い

・21世紀の資源 海洋深層水を学ぶ


‥‥などなど、講座は、歴史、IT関係、自然、環境、文化、芸術など多岐に渡る。


 また、地域の企業も講座を開催した。


・工務店 「失敗しない家作り」

・旅行サービス会社 「山旅塾」

・製薬会社 「健康トピックス」


 企業とつながったことで、産学官の連携ができるようになったそうだ。


 前回のレポートでも書いたが、市民塾の講座はまずネット上で行い、メールや掲示板で意見交換。そして、実際に集まるスクーリングも開催した。


 すでにネット上でやりとりしていることから、講師、受講生同士は馴染みやすく、スクーリングは、スムーズに行われたそうだ。


働き盛りの男性が講師に


 インターネット市民塾の講師の約37%は会社員で、40~50代の男性が多かった。

 一般的には、中年の男性は仕事で忙しいために、生涯学習などの講座に参画する人は多くない。


 インターネット市民塾は、時間、場所を問わずに講座を開催できるということで、中年男性も引きつけた。女性も徐々に増えていったという。


 柵さんは多くの市民講師を育成し、サポートしていった。


 中には、戸惑う人にいたが、

「難しいところは専門の先生に来てもらえばいいんですよ。あなた自身が専門家になるまで待たなくていいんですよ」

と、柵さんが声をかけると、安心したように講座を始めた人もいたそうだ。


 講師になった人の動機は、自分の経験や知識を生かしたい、自身の今後の展望を拓くためなどが多かった。下記を参照。


市民講座が、学びの循環を生み出す


 さまざまな市民に働きかけ、講座を開催していくと、講師同士の勉強会も行われるようになった。そして、講座受講から新たな市民講師が生まれていった。


 「IT活用塾講座」を受けた人が「ティーパーティを開こう、そしてパソコン活用講座」を開催。「ティーパーティを開こう、そしてパソコン活用講座」を受けた人が「体のためになる食事」の講座を開催というふうに、受講生から市民講師が生まれていった。


 柵さんが紹介した事例からいくつか紹介する。


70代女性

市民講座を受けたことで刺激を受け、栄養士として長年勤めた経験を生かして講座を開催。


60代男性

大手企業を定年退職したあと、受講者となる。講座をきっかけに健康を勉強して講座を開設。70歳で健康予防指導に関する事業を立ち上げ、75歳で福祉系の大学に入学。


30代女性

結婚退職した後に、自宅からネット講座を開講。講師経験を重ね、現在は地元の小学校や学習センターで非常勤講師を務める。


40代男性

サラリーマンの仕事に疑問を持ち、転職を模索。講座受講をきっかけに父が営む農家の経験を元に講座を試行。その後、農業支援ビジネスを起業した。


 市民講師の講座は親しみやすく、インターネット開催でどこにいても参加できる。つまり、講師も受講生も参加するハードルが低いことで、多くの人たちが参加した。

 そこから、職場、友人とはまた違う、学習によるコミュニティが生まれ、そのコミュニティの中で学び合い(知識が循環)が生まれ、新たな活動へと発展していった。


市民講師の体験から、道が開けた


 次に、市民講師になる体験とは、どのようなことなのか、次のように話してくれた。

 ひとりひとりが小さな主役に

 ひとりひとりが身の丈で発信する

 相手がいることで始まる学び

 相手がいることで期待され元気がでる

 いつでも教えあう関係は知恵を足し合う関係

 いつでも教えあう関係は信頼しあう関係


 市民講師は、予想以上の大きな体験だったという、感想も寄せられた。


「一番学んだのは自分だった」

「人とのつながりに積極的になった」

「小さくてもいいからやってみる、やってみると自分のできることが見えてくる」

「講師をやって、いろんな考え方があることが分かった。客観的に自分のことを考えるきっかけになった」

「講師と受講者が学び合うことは、とてもよいことだと感じるようになった」

「地域に埋もれている大切な日本の知恵を、次の世代に残していきたいと思う」

「教えるために学ぶことは、自分の財産を作ることだと思った」


 市民講師になることの意味について、柵さんは次のように語った。


・何ができるか振り返る

・教えるために学ぶ

・自分を学ぶ(参加者から学ぶ)

・他者、社会と接する

・自身の知の再構築

・新たな目標を見いだす


地域も元気にしていった


 市民講師デビューは、その人の人生を豊かにしていくだけでなく、地域の知識財(人材)、コンテンツが顕在化。さらには、地域人材として課題解決に向かっていくと、柵さんは図を使って説明した。


実際、インターネット市民塾を起点に、多くの地域活性化事業がはじまっている。

(次の図を参照)


 第3回目は、受講した人の反応、コミュニティ型の学びについてお伝えします。


(まとめ みらひらナビ 編集長 いとう啓子)


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